会議の後で。
テーブルに向かい合わせで座る彼らは、互いに存在しないかのように無関心を決め込んでいた。
広い部屋の中、静寂が響き渡る。
先に動きをみせたのはアントーニョだった。
テーブルの下で空気が動く。アントーニョの爪先が、アーサーの爪先に触れた。
アーサーの表情は変わらない。
まさに興味がない、と言わんばかりの様子が彼らしい。
爪先をふくらはぎへと滑らせた。
それでもイギリスはぴくりともしない。
ふきらはぎからゆっくりゆっくり形の良い脚を辿っていく。
早くそのすましたポーズを崩してやりたかった。つんとすましたその小さな体、全身から感情を迸らせて、叫び声をあげさせたい。
太ももの内側に至ったとき、されるがままであったアーサーが突然動いた。素早く蹴り落とされる。
遊びも終わりか。
惜しく思いながらも腰を浮かせかけたアントーニョだったが、アーサーがすぐに足を絡ませてきたことによって立ち上がることはなかった。
アーサーの思惑を探ろうと表情を伺うが、まるで素知らぬ顔。
机の下では今もなお性的なものを連想させる動きがされている。
アントーニョは唇の端がつり上がっていくのを抑えることが出来なかった。
右足をアーサーの足と絡ませながら、左足を彼の脚の付け根へと伸ばす。蹴り落とされる前にぐっと股間を刺激した。
アーサーの眉が動いた。ぐりぐりと足を押し付ける。おさえてはいるが、息があがっていくのが空気を通して伝わる。
「アーサー」
アーサーの股間を刺激したまま、彼の手をとり、口付けを促した。ゆっくりと重なる唇。互いの粘膜をこすりあわせ、欲求を高ぶらせていく。
「な、俺のも弄って?」
口付けのあいまにそういえば彼は面白くもなさそうに笑うとその体をアントーニョの視界から消した。
ほどなくして、下から金属と金属のぶつかりあう音が聞こえてきた。アントーニョのベルトが引き抜かれ、次いでジッパー特有の音が響く。
衣擦れの音。そして、直接的な愛撫がアントーニョの下半身を包み込む。
「…っ……」
濡れた音が心地良い。
机の下に隠れている金の髪に指を這わせるとより一層愛撫は強くなる。
アーサーの息遣いが、見えないことも手伝ってか、耳によく響く。
「…は、ぁ…、…ん」
「…うっ…」
アントーニョの息も、アーサーにつられるように次第に上がっていく。
ふいに、下半身から温もりが消えた。知らずに快感に耐えるため閉じていた瞳を開く。
僅かな隙間から、アーサーが挑発的な笑み覗かせていた。
「アーサー……」
アントーニョのものを頬につけ静かに撫でている画だけで、気を抜くとイッてしまいそうだ。
「イけよ」
何か言い返す間もなく、アーサーに強く吸いつかれたかと思うと、アントーニョは情けないほど呆気なく果てた。
快感にぼやけた脳が、嚥下する音だけをやけに鮮やかに認識した。
「…おい…」
視線を下げると、アーサーがアントーニョのものをしまいこみながらこちらを見つめていた。
「部屋、あんだろ」
挑戦的な目が、誘っていた。
会議の後で
(二人だけの時間を楽しもうじゃないか)
2008/04/06
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