不器用な愛しか囁けぬ君に口付けをあげよう。
―― はっ……
部屋に熱い呼吸が充満する。濃厚な空気に息が詰まりそうだ。
ことの始まりはなんだったろうか。甘さなんて欠片もなかったような気がする。
ドライな空気のまま、済し崩しに体を重ねた。
互いに一度果て、それでも足りなくてまた体を絡み合わせる。
繋がりあっている部分からは、水音がひっきりなしに響いている。
前を触ると男の体はびくびくと跳ねる。
そうすると結合部が締まって気持ちが良かった。
簡単に終わってしまっては困るので根元を握り締めて弄ると、酷い顔で睨まれた。
ふと、男の唇の端が切れていることに気がついた。
鮮烈な紅に、興奮した。
―― 声、出して。
血液を流している唇に口付けて囁いた。
それでも頑なに口を閉ざす男が漏らすのは、甘さのない荒い吐息だけだ。
―― ねえ、お願いやから。
何度も何度も子どものような口付けを落とす。
―― 聞かせたって。
両手で腰を掴み、緩やかに奥を穿つ。
彼の唇を舌でなぞる。
突然、舌に鋭い痛みが走った。
―― ああっ
目の前が真っ白になる。欲望が放出する。
ゴムの中に白い液体が注ぎこまれていく。
―― はあ…、はあ…
手の甲で口を拭う。彼のものではない紅い血液が、べったりと付いていた。
――勝手に一人で終わらせてんじゃねえよ。
憎らしいくらい厭味な笑みを浮かべて、男は漸く口を開いた。
不器用な愛しか囁けぬ君に口付けをあげよう。
(そんな君に、私は酷く興奮するのだ)
2009/08/09
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